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備忘録

劇団トレメンドスサーカス『サロメ』を終えて

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劇団トレメンドスサーカス『サロメ
無事終演いたしました。
ありがとうございました。



「太宰は私だ」


太宰治ファンの多くが言う言葉です。
太宰ファンは太宰治の書く言葉に共感して好きになるパターンが多いらしいです。

劇団トレメンドスサーカスのファンになる方も、きっとこれに近いのだと思います。
登場人物の誰かに強く共感することで心揺さぶられ、その体験を求めて次もまた劇場へ足を運ぶ。
というか、トレメンドスサーカスが推奨している「トレメンドス作品の楽しみ方」が、そもそもこれなのではないでしょうか。
私はお客さんとしてトレメンドスを観たことはなかったのですが、出演してみてそう感じました。

トレメンドスサーカスの作品は全て、役者自身に役を当てて書く「当て書き」で書かれています。
それはつまり、役者自身の性格、性質、人生等々に沿って書かれた役ということです。
私は初めての当て書きだったのですが、この手法は驚くほど芝居に真実みを持たせてくれると感じました。

私の役はヘロディアス。サロメの母でした。
初めての母親役ではありましたが、これまで演じた役の中で最もすんなり演じることが出来ました。
それは恐らく、子供に対しての接し方がかなり私の母に似ていたからです。
いわゆる毒親ですね。
もちろん完全に同じではないですが、言動や心理の端々に自分の親を感じるところがあり、本当にすんなりとやるべきことが見えた感じでした。

とは言えそれは決して良いことではないと思うのです。
大学を卒業して一人暮らしを始めるまでの毒親との共同生活は本当に辛いものでした。
そんな体験、本当ならしていない方がいいのです。

冒頭で言ったような、お客様のキャラクターへの共感も、本当なら無い方がいい。
各々何かつらいものを抱えているキャラクターに共感してしまうようなものなんて、持っていない方が幸せです。
今回かなりのお客様から「話がサッパリ分からなかった」とのご感想を頂きましたが、この物語に1ミリも分かる要素が無いのなら、それは幸せな人生なのだと思います。
傷なんて付いてない方がうんといいです。
でも、傷を持ってる人に「私も同じ傷を持ってるよ」と寄り添ってあげるキャラクターたちこそが、トレメンドスサーカスの持ち味にして存在意義なのではないのでしょうか。
そうでない方が絶対いいけど、それでもこれがあることで救われる人もいるのではないかと思います。
私もまた、少しでもヘロディアスに共感できた方の救いになっていたら嬉しいです。



ただ、ひとつヘロディアスに対してどうかと思う点(笑)がありまして。
「親に愛されなかった子供は、子の愛し方を知らない」という台詞がありますが、そんなことはないです。
親と子は他人、別人です。似ているところはあるでしょうが、全く似ていない独自の性質もあります。
親を恨むのは自由ですが、一生被害者ヅラして前に進もうとしないのは違うと思うのです。
当て書きと言えど、そこが私の考え方とは違ったので、ヘロディアス~!なんでや~!メソメソしとらんとシャンとせえ~~~!と思いながら言ってました(笑)


とは言え、本当にエネルギッシュで、見る人によっては非常に大きな影響を受ける作品だと思います。楽しんでいただけたようなら幸いです。



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